12/22  『相棒』11話感想・・・にかこつけた、極私的キャラ考察そうざらえ


今回は、『萌え』を巡らす余地もなく見入ってしまいました。
前回、バカみたいに大騒ぎしてしまってごめんなさい。深く反省しました。あれは、最終回に向けての小休止、つまり嵐の前の静けさを表現する演出だったのですね。

・・・・・・・・・・

小野田あやしいなあ。こいつホント何考えてるか分からないなあ。

「うえるかむ、杉下右京」
クラッカーぽーん!

間違いなくこのオヤジ頭イカレてます。

右京さんが撃たれたときも相変わらずのローテンション。
「大丈夫か、杉下」
って言われても、全然心配しているように見えないんですけどー。

「人に恨まれるような、生き方してきたつもりはないんだけどな」

この大嘘吐き。

少なくとも杉下右京は、あんたのことを死ぬほど恨んでると思うぞ、というか恨まれても仕方のないことをしているぞ。
いや、恨んでいるというより、関わり合いたくないんだろうな。右京さんから見たら小野田は、疫病神以外の何物でもないだろうしなあ。小野田はあの右京さんでさえ、取り扱い不可能な危険物だもんな。

15年前の大使公邸立てこもり事件の回想シーンで、無茶な強行突入を指示した挙げ句、右京さんを解任した小野田に、私は真面目にムカつきました。ええ、もう、殺意すら覚えましたとも。
あまりの悔しさに涙ぐみながら身を震わせる右京さんとか、特命係のプレートを叩き割る右京さんに、感情移入しすぎて、泣きそうでした。
まあ、小野田も強行突入したらどうなるか分からないほどバカじゃないはずだし、犠牲者が出ても、右京さんを切ってまでも、守らなければいけない何かがあったはずだと思うんだけど(米国高官が来日するとかそんなちゃちい理由だけではなく、もっとこう政権が揺るぐほどの大スキャンダルに発展しそうな何か。そうでなくては納得しないぞ)。


とは思うけど、やっぱり小野田は信頼できないなあ。
ラストで、15年前の事件の関係者に悪いと思っているようなことを言っていて、一瞬私の心がぐらつきそうになっても、その後で、
「なーんてね、ふふ」
とか、すかした顔で言いそうなところが厭だわあ。でもそれが小野田だわあ。

しかし、どうしてだれも、あの若右京さんの髪型については突っ込まなかったのでしょうか。
私一瞬、
「なんで15年前なのに今より生え際が後退してるんだよ!」
って思ってしまいましたが(だってそう見えたんだもん)
なんだか、あのてっかてっかのオールバックでは、遠目で見ると右京さんの頭が豆電球みた・・・あわわわ(お前は本当にファンなのか?)
若い頃の実直ぷりと堅物ぶりを演出するためなのは分かるんですけど・・・。もうちょっとこう、違う形で見た目の若々しさは出せなかったのかと。
ええい、もう、ヘアメイクさんを小一時間問いつめたい(おいおい)。

えーと、髪型は変でしたが、回想シーンで「やっぱり、水谷豊って凄いなあ」と思ったのは、15年前の右京さんが、本当に30才そこそこの若造に見えたこと。
声の出し方・姿勢・動き・表情。そうした所作の隅々に、今とは違う右京さんの若さがにじみ出ていました。それもとてもナチュラルに。

頭は激烈にキレるけど、刑事としての現場経験はまださほどでもない(多分)若右京さんが、不幸なことに小野田に見込まれちゃって、無理矢理『大使公邸人質事件』のチームの参謀役に任命されて、SATを前に自分に課せられた任務の重さにガチガチに緊張しているんだけど、「見ての通りシャイなんだ」って小野田には紹介されて、写真なんか撮ってる場合じゃねえだろう今は、っていう至極もっともな正論言っても、上官の命令には絶対服従な警察機構内ではさらりと無視されて、変な写真は撮ってしまうし、当時の日本ではほとんど例のなかった(多分)大使公邸占拠事件で、犯人との交渉役なんていうクソ難しい仕事をやらされて、一歩間違えば人質が殺されるという重圧の中で、冷静に、冷静に犯人と交渉をして、人質を減らすことに成功したのに、不条理な上官の命令が下って、「出来ません」って、本当に出来ないから言っているのに、結局解任されて、おまけに尻拭いまでさせられて。
今では冷や飯喰わされすぎて、慇懃無礼な鉄仮面が全身に張り付いてしまっている右京さんですが、本来は相当激情的で、自分の信念に反することには「NO」と強く言ってしまう人なんですよね。今も本当はそうなんだけど。
表現型は違うけど、そういう根っこの部分が、亀山君とよく似ている。

という状態を、短い回想シーンの中で、そういう細かい設定が視聴者に伝わるように演じられてたあたり、やっぱりプロですよねえ。
 
 旦那曰く、「できません」はサラリーマン世界では禁句なんだそうです。いかに無理難題をふっかけられても、とりあえず「やってみます」って言わなくてはならないんだそうです。嫌なら辞めろ、という事なんですよね、結局は。
 多分警察に限らず、どの会社であっても組織であっても、不条理で非合理的なシステムは平気でまかり通っているのでしょう。それが誰のメリットにもつながらず、誰も幸せにしない施策や方針や命令であっても、一度始まってしまったら止められないし、それが失敗したところで、本来責任をとらなくてはならない人間が責任をとらずに、うやむやにしてしまうシステムになっている。
 私も一応、市民の税金で喰わせてもらっている身分なので、「これじゃあお役所仕事って言われても仕方ないよな」って、歯ぎしりする程悔しかったり、眩暈がするほどの怒りに襲われるような場面に直面することも多々あるけれど、そんな自分も所詮は歯車の一部で、自分の代わりはいくらでもいるのだという事実の前には、怒り続けることにも疲れて、今はあきらめモードです。

11話の最後に、石嶺の撃った弾が『奉職』と書かれたプレートに食い込むシーンがありました。それは多分、世間体や組織のシステムを維持することばかりにとらわれて、本来大切にしなくてはならない『個』をないがしろにしている、組織全般に対するアンチテーゼなのでしょうね。

今回亀山君の男前度が、当社比3割くらいアップしてましたね。
いつも右京さんに仕切られてるわ、単細胞扱いされているわで、必要以上に右京さんに頼っている部分があったんでしょうけど、今回右京さんが撃たれて亀山君一人で動いていたせいか、なんだかいつにもまして精悍に見えました。惚れ直してしまいました。きゃーかっこいいー。
やはりこれはパワーバランスの問題でしょうか。
前回のおんぶシーンでもそう思ったけれど、亀山君は頼られると意外と能力を発揮する模様です。

各話における、右京さんと亀山君のパワーバランスを記号で表すと多分こんな感じ。

1話〜9話  右京>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>亀山

右京さん圧倒的優位。亀山君は主人に忠実に付き従う下僕的存在。私は野郎同士の友情物が三度の飯よりも好きなのですが、ちょっと亀山君、右京さんになつきすぎじゃない? と話が進むにつれ思わなくもありませんでした。

それが10話のおんぶシーンで、足を怪我した右京さんが亀山君に頼らざるを得なくなったあたりで、微妙に亀山君がイニシアティブを取ることになります。
 
10話 おんぶシーンにおけるパワーバランス


       右京≧亀山

右京さんは亀山君の背中の上で「人に頼ると、案外楽だ」という普遍の真理に、今更ながら気づいてしまったのかもしれません。そりゃあ右京さんは、亀山君のことは前から信頼していたと思います。亀山君は嘘をつかないし、裏切らないし、基本的に表しかない人間だから、変に深読みする必要もないし。
でもだからといって亀山君に「頼っていた」わけではなかった・・・気がします。右京さんは一人で何でもやってしまえる人だから。

多分視線が高くなって、いつもと違う視界が開けたから、悟りまで開いちゃったんですよ。きっとそうです。そうでなければ、あの右京さんの異常なはしゃぎっぷりは説明できません。

11話では、とうとう銃創まで負ってしまった右京さん。
お見舞いに来てくれた亀山君に、
「僕は君と無駄話をするつもりはありません」
などと憎まれ口を叩いて、自分の優位性をついつい主張したがってしまう右京さん。
何でそんな言動をとってしまうかといえば、亀山君には、右京さんが窓際に追いやられている本当の理由を知られたくなかったからでしょう。
15年前の事件で、右京さんが詰め腹切らされるなんて、とばっちりもいいところなんだけど、きっと右京さんは上司の暴挙を止められず、多くの犠牲者を出してしまったことに対して、自分を責めてしまっていたんじゃないかなあ。なんとなく、そういうふうに右京さんは考えてしまいそうだ。

でも亀山君は特命係の本当の発足理由を知ってしまって、その上で
「なんどひどい目に遭わされたら気が済むんですか。あなたは被害者なんだ。被害者は被害者らしくしてればいいんだ」
と、右京さんに対する仕打ちのひどさに、本気で悔しがっていて、怒っていて。
そのことで右京さんに15年前から取り付いていた憑き物が、ぽとんと落ちてしまったみたいに見えました。
やはり世の中、天然が最強なのです。何しろ亀山君はあの小野田をして、そのバカがつくほどの真人間ぷりで「君が杉下と上手くやっている理由が分かる」などと言わしめた人間ですから。

亀山君の激情に、右京さんの口調は命令から要請へと変化します。
11話のラストでは、右京さんが亀山君に、
「亀山君、手伝ってください」
「あなた以外に、誰がいるんですか」
と、それまでの上司と部下というような上意下達な関係ではなく、対等な仕事上のパートナーとしての契約を結びます。
なんかもうねえ、この時の薄く笑った右京さんの表情と、右京さんの信頼をがっつり受け止めた亀山君の真面目な表情に、泣きそうでした。すごく嬉しいのに、なんだか切なくて。

多分最終話では 

  右京≒亀山(予想)

みたいな力関係になるんじゃないかと。
つまり、それまで片一方に偏っていたパワーバランスが、最終回には対等な物になり、名実ともに二人は真の意味での『相棒』になる、というのが裏の「オチ」になるのかもしれないですね。



<今回の萌えシーン>
病院で目を覚ました右京さんが、鈴木(仮名)が持ってきた花を見つめるシーン。眼鏡を外したその表情が、「傷天」の時の水谷豊と同じ顔だったのでびっくりしました。いや、同一人物なんだけど。
30年前と変わらないその表情に、一番ときめいてしまったかもー(バカ)


<最終回予想>
こんな台詞があったらいいな編

右京「捜査をするにあたって、私の方からも条件があります」
小野田「何かしら」
右京「特命係の亀山薫を・・・警察庁に呼んでください。私の直属の部下として動いてもらいます」
小野田「お前が、他人の手を借りたがるような人間だとは思わなかったな。なんだか新鮮」
右京「・・・あなたが私を必要としたように、私にも信頼できる部下が必要です。特に、この事件の真相を解明するためには」

とまあ、こんな感じな会話を、ブリザードが吹き付けるような寒々しい雰囲気でやっていただきたいですねえ。
で、亀山君は「ようっしゃー、栄転だ。栄転だ。信頼してくれてる右京さんのために頑張るぞー」と一人で、右京と小野田のブリザードを吹っ飛ばしてしまう、ていうのがいいなあ(いいのか?)。

結局特命係はどうなるんでしょうね。廃止になるのは仕方ないとして、なんとか続編が期待できるような終わり方にはならないでしょうか。
例えば、二人とも警察庁に残って、迷宮入りしそうな事件とか、表沙汰にせずに処理したい困難な事件があったときにだけ、また特命係として二人がチームを組んで、事件に挑む、っていう展開なら、いくらでも続編出来そうだと思うんだけど、どうでしょうかねえ。考えてもらえませんかねえ。年に一度のスペシャルだけでも恒例にしてもらえませんかねえ。『北の国から』みたいに。

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