『傷だらけの天使』レビュー

第1話『宝石泥棒に子守唄を』 監督:深作欣二 脚本:柴 英三郎
修(萩原健一)は貴子(岸田今日子)の命令で宝石店に押し入り、多額の宝石類を強奪するが,途中子供にケガをさせたことから仕事は思わぬ方向に進んでしまう・・・。
ゲスト:西村 晃、金子信雄、船戸 順、真屋順子、坂上 忍 他

 白いヘッドフォンにゴーグル着用のショーケンが起きあがると、冷蔵庫から食べ物を取り出して豪快にかぶりつくオープニング。いきなり本編が始まったのかと思っていたら、2話冒頭でも同じシーンから始まったので、あ、オープニングか、と思った次第。
 のっけから修ことショーケンは半裸を惜しげもなく晒してます。うーん。野獣系。修は学はないけど、頭の出来自体はそんなに悪くない(でもバカ)。見た目典型的チンピラだけど、情にもろくて正義感が強い。女の扱いも手慣れたもので、男気があるから案外もてる。
 これ書いてる現在、4話まで見たんですけど、修は毎回脱いで、女とヤって、仕事がらみでボコボコにされて、迷走した挙げ句結果的には貴子の思い通りになって、不本意だけどギャラを受け取って終わるというのが、ドラマの定石みたいですね。アンハッピーでもバットエンドでもないけど、毎回ハッピーとは言えない結末。 

 水谷演じるアキラは、学歴以前にナチュラルに頭が弱そうです(誉め言葉)。『オレ、アニキがいないとダメダメなんだよぅお〜』オーラ出しまくりで、オサムに金魚の糞みたいにくっついている舎弟役。
 ほんとに、ほんとに、ほんとーーーに今更だけど、水谷さんてこんなにも演技がうまかったんだなあ、と思いました。
 アキラのあれだけのかわいらしさを「演技で」表現しているところが凄いです。
 ああ、もう、若いのになんてカンのいい役者さんなんだろう。
 視線で、表情で、細かな体の動きで、台詞だけでなく体全体でアキラ役を表現していました。
 
 ストーリーは、シナリオのプロットのツイスト具合がツボに来ました。宝石を巡る様々な人間の思惑が交錯し合って、収斂していく感じ。
 どうしてオサムとアキラは一緒に住んでいるのか、とか、どういう経緯で貴子の探偵事務所の使いっ走りをやっているのか、などの背景説明がないから、視聴者にとっては不親切。一見さんには分かりにくそう。私は三回見直したけど、理解し切れたのかどうか自信がない。でも余計な説明を排したスピーディーさがいっそ潔い。

 印象的だったのは、綾部貴子がオサムを称したこの言葉。
「あの子は飢えている方がステキなのよ」
 激烈同意。
 端的に、このドラマの全てを表現していたと思います。

<2002.12.15>




第2話『悪女にトラック一杯の幸せを』 監督:恩地日出夫 脚本:永原秀一、峯尾基三
恵子という女性のボディーガードの仕事を依頼された修。おいしい話と思いきや、実は恵子は銀製の高級洋食器の盗難事件にからんでいた。さっそく首を突っ込む修だが・・・。
ゲスト:緑 魔子、江原達怡、上野山功一、北村総一郎 他

 この時代背景で、はすっぱな女というと、どうしてもみんな鈴木いづみに見えてしまう・・・。
 しかしあれだね。70年代ドラマって、女でも平気で拷問するのね。容赦ないわあ。今のぬるいドラマに慣れちゃった目からすると、かなりそのことが衝撃的だ。
 ストーリーを追ってるときりがないので、印象的なシーンについていくつか。

 まずはオサムと恵子のベットシーン。
 カメラが退いていくと、部屋の隅でアキラがヘッドフォンで音楽を聴いている。
 知らんぷりしておっ始めてしまうオサムもオサムだが、「見てないから大丈夫だよ」と居座ろうとするアキラもいったい何なんだろう。
 ジェラシー・・・に見えますが、やはりそうですか?
 そんなアキラを見て、「アキラ、おいで、一緒に寝よう」と手招きする恵子。
 アキラはさっきまでオサムと寝ていた裸の女を目の前にして、とても困ったようにもじもじしてます。その仕草ときたら、私の貧相な言語能力ではうまく言い表せませんが、とにかく母性本能をくすぐられました。そりゃ、恵子も添い寝させたくなるわな。
 見れば分かるんです。ホントに。この良さが。
 結局3人で添い寝して、恵子の肩に顔を埋める時のアキラの仕草がかわいい・・・(こればっかり)。握りしめた手の位置がとても微妙でいい。そんなアキラを見て、
オサム(俺の女にくっつくんじゃねえ)
アキラ(ご、ごめん)
 って声が聞こえてきそうな、二人の細かい動きの演技も良いです。 
 捨て猫が3匹、身を寄せ合ってるみたいで、印象的なシーンでした。
 で、その次のカットでは恵子だけ起きていて、ベットにはオサムとアキラの二人だけが添い寝・・・ぐふっ。
 やはり既にこの時点で何かを狙ってましたかね、スタッフさん? 
 
 それから、恵子が実兄を射殺してしまうシーン。泣きながら死体に取りすがる恵子と、駆け寄るオサム。アキラはその3人を離れたところから見ていて、足から力が抜けてしゃがみ込んで、両手で萎えた足を一生懸命さすっているところを後ろから移していく一連のカメラワークが「うまいなあ」と思いました。

 最後は、銀食器を上野の路上で叩き売りしているシーン。
 1/10の値段とはいえ、5万の食器を路上で買うような市民はまずいない。そんなことは半ば分かっていて、それでも他に方法がない、っていうどうしようもなさ加減に、こっちまでいたたまれなくなりました。アキラちゃん途中で泣き出しちゃうし。こっちも泣きたいよ。惨めだよね。
 そういう、基本的に彼らのやってることはあまり報われない、っていう話のテイストは、きっとこれからも続いていくのでしょう。
 

<2002.12.16>

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